手紙
近頃俄かに暑くなってきたので、デオドラント製品及び薄荷油等々を購入する為にドラッグストアに行った。
薄荷油は三年前から毎年夏季に愛用しており、夏になると私から異常なまでの薄荷臭が発せられるということで周りからは大変不評な一品。然しもう私はこれ無しでは京の夏を越せない身体になってしまった。自分にかけるのは勿論のこと、風呂に入れたり布団にかけたり飲んだりと薄荷塗れの生活を送っている。
そしてトイレットペーパーも切らしていたので追加で買うことに。私は排便後肛門を拭く際に「まだ便がこびり付いているかもしれない」と云う強迫観念に囚われがちで、凡そ2回の用便で1ロールを使い切ると云う日産のサファリばりに燃費の悪い野郎なので、トイレットペーパーと肛門がよく切れるのである。
商品を一通りカゴに入れてレジに持っていくと、そこにいたのは「研修中」の名札を付けた若い女店員。顔は中の中、小清水亜美のスッピンはこんな感じなんだろうなーみたいなフェイス。ぎこちない手付きで商品のバーコードを読み取っていく。
そしてトイレットペーパーを手にして一言
「こちら、ティッシュで宜しかったですか?」
と宣った。
私は周章狼狽した。「宜しかったですか」の言い回しも若干許せない部分はあったが、問題はそこではない。目の前にあるのはトイレットペーパーなのに、これがティッシュで宜しいか、との問い掛け。これは一体どういった禅問答なんだろう。
「ティッシュ用のトイレットペーパーとしてご利用ですか?」の意か、将又「こちら見た目はトイレットペーパーなんですが、実はティッシュなんです。御存知でしたか?」の意か。分からん。一休さんでもこの頓智には泣いて土下座するだろう。
そんなことを考えている間に女店員が
「あ、シールで宜しかったですか」
と言い直した。
咳払いを頻りにしているが明らかに笑っていた。
付き添ってるパートのおばちゃんは普通に吹き出していた。
二人ともとても楽しそうだった。私も混ぜて欲しかった。物凄い疎外感だった。
「ティッシュで宜しかったですか」の問題発言からおばちゃんが吹き出すまでの間は2秒程であったが、この2秒の間に私の中を様々な思いが駆け巡った。それを文字通り一笑に付された私は何とも遣る瀬無い気持ちになった。このモヤモヤをこうして書き殴ってみても何の解決にもならない。死のう