THE LAUGHING WOLF

便所のお供に、是非。

間違ったハンバーグの作り方

一人暮らしを始めて既に五年目に突入している。不安とワクワクが綯交ぜになっていた、当初のあの感情はどこへやら。

 

一人暮らしと言えば、まず思い浮かべるのが自炊だろう。「一人暮らし=自炊」のイメージは未だ人々の中に根付いており、斯く言う私もその固定観念に囚われていた人間であった。然し実際ノリノリで自炊をしていたのは初めの3か月程度で、それからは鍋物等の作り置きできるものくらいしか料理していない。

 

抑々私が料理をすると碌なことにならないケースが多い。レシピ通りに作れば良いモノに要らぬ一手間を加えた所為で、料理が台無しになることが往々にしてある。

 

この性分は昔からのもので、小中学校時代の家庭科の調理実習でもその要らぬ好奇心を存分に発揮していた。

 

 

 

高校二年生の秋口。夕餉で一家団欒をしていた時のことである。

私の弟(当時中学二年生)が、今度家庭科の授業の調理実習でハンバーグを作るとのこと。

 

そしてハンバーグ作りの計画を立てていた際、家庭科の先生が弟に

 

「三年前にあんたの兄ちゃんが作ったハンバーグ、私はまだ覚えてるよ……」


と要らぬことを吹き込んだらしい。

 


当然、弟に「どんなハンバーグ作ったんだよ」と問い詰められた。


 


あれは忘れもしない、中学二年生の秋口(回想の回想)。

私達はハンバーグ作りの計画を立てていた。どの班も、如何にして自分たちのオリジナリティをハンバーグに表すか悪戦苦闘していた。

私の班は男三人。他の二人は圧倒的イエスマンで、私のアイディアを何でも受け入れた。

「パイナップルとか乗っけるか、酢豚みたいに」と私が言うと、

「いいんじゃね」と二つ返事で、彼らは何でも首肯した。今思えばこの段階で止めて欲しかった。


ここで私の脳に未曽有のインスピレーションが。

 

 

鮮やかな青空。

紺碧の海。

色とりどりの果実。

そう、それは正に南の国。

 

 

何故かハワイアンな光景が脳裏を過り、私は何とかこのイメージをハンバーグに投影できないか思索に耽った。

 

 

熟慮の末、私は口を開けこう言った。

 

 


 「緑色のソースを掛けて、トロピカルなハンバーグにしよう。ソースの味はメロン味でいいか?」

 



 私の突飛極まりない問いかけに、二人は

 

 

「まぁ、いいよ」

 


と快諾した。

 


話し合いの末ソースは、かき氷のメロンシロップに片栗粉を混ぜて餡にしたものをハンバーグにぶっかけることにした。

 


 

 

満を持しての調理実習当日。

 

私達の班のテーブルの上にはパイン缶、片栗粉、メロンシロップと、到底これからハンバーグを作るとは思えない食材が並んでいた。



まずはハンバーグを作る。こちらは文句なしに上手く出来た。

私達にとってはここからが本番。

取り敢えずハンバーグにパイナップルを盛る。一人前に輪っか三枚ぐらい乗せる。



そしてソース作り。片栗粉とメロンシロップを混ぜる。

ここで問題発生。



ソースがトロトロにならない。

どれだけ混ぜてもサラサラのまま。



そう、片栗粉でとろみを出すためには加熱しなければならない。

 


然しそんなことを全く知らない私達は

「量が足りないんじゃないか?」

と、片栗粉をドバドバ入れた。



一向にトロトロにならない緑色の液体を前に我々は周章狼狽した。

 

この時、班員のE藤が奇跡を起こす。



 彼は「火にかけてみよう」と言い、涙目の私をよそに鍋に液体を入れて熱した。



すると見事にとろみが!

私達は抱き合って喜んだ。
漸く思い描いたハンバーグを作ることができる。

 


然し様子がおかしい。
トロトロの液体の粘性がどんどん高まっている。

その姿は宛らバブルスライムのよう。

 

↑参考:バブルスライム

 


「おい、ちょっと固まりすぎじゃないか!!?」



バブルスライムはあれよあれよと凝固を進め、最終的に鍋には緑色のボールが転がっていた。




「なにコレ!!?」

 

「きんもー!!!」


気が付くと鍋の周りは、 私達の班で爆誕したモンスターを見に来た他の班の生徒でごった返していた。



「それちゃんと食えよ!」

 

「残すなよ!」

 

彼等は私達を嘲り笑い去っていった。



もう食うしかない。覚悟を決めた私はスライムベホマズンを引きちぎって三等分して、夫々ハンバーグの上に乗ったパイナップルの穴に埋め込んだ。

 

↑参考:スライムベホマズン



全ての班のハンバーグが完成し、愈々この未知の料理を食す時が来た。



一同「いただきま~す!」




パク



ネチョ

 


モニョ

 

 


モッチャァ

 

 

 

 


「これは、ねぇよ!!!」



比較的おとなしいもう一人の班員、M本がブチギレた。私もキレた。

E藤は壊れたらしく、高笑いを上げながら食っていた。



銘々の班がハンバーグの交換を楽しむ中、私達の班のハンバーグを貰っていく者は誰一人いなかった。



 

 

料理はレシピ通りに作るのが一番だって、はっきりわかんだね

フルーティな苗字

 

この頃果物を無性に愛おしく思うことがある。
 
大凡の果物が可愛らしい見た目をしていて、可愛らしい味をしていて、可愛らしい芳香を放つ。種を蒔く為にこの様な進化を遂げたとはいえ、こんなものが自然に生み出されたのだから地球は本当に偉大だと心底思う。
 
誰かに食べてもらう為に己を磨いてきた果物達のことを考えると、愛くるし過ぎて眠れなくなる。
 
そんな果物をふんだんに使った、実在する苗字を紹介してみる。載せる基準はクッソ適当。
 
 

 

 

「リンゴ」

林檎 リンゴ 「林郷」の異形。
 
「ミカン」
蜜柑 ミカン
樒柑 ミカン
櫁柑 ミカン
蜜柑山 ミカンヤマ
樒柑山 ミカンヤマ
櫁柑山 ミカンヤマ
 
ミカンヤマ姓は三種とも鹿児島に分布。ミカン単体は超稀少苗字で詳細不明。
 
「ブドウ」
葡萄原 ブドウハラ・ブドハラ
 
岐阜県に存在。宮城県に「葡萄原山」と云う地名がある。
 
「イチゴ」
苺谷 イチゴダニ・イチゴタニ
莓谷 イチゴダニ
盆子原 イチゴハラ・ボンコハラ他読み多数
 
イチゴの当て字に「覆盆子」がある。
覆盆子は中国由来でキイチゴの意。
盆子原と云う苗字は地名由来。
 
「ザクロ」
柘榴 ザクロ
地名由来。
 
「モモ」
桃 モモ
白桃 シラモモ
大桃 オオモモ
 
その他「桃」の付く姓多数。
 
「ナシ」
梨 ナシ
梨子 ナシ
その他「梨」の付く姓多数。
 
「アンズ」
杏 カラモモ
杏井 アンズイ
杏川 アンズカワ
杏山 アンズヤマ
 
これ以外にも「杏」を用いた苗字はあるが、読みに「アンズ」が入っているのは下の三種のみ。
 
スモモ
李 スモモ(大体の読みはリ)
李沢 スモモザワ
李木 スモモ
 
他、もともと李(スモモ)だったが中国人に間違えられるのが嫌で改姓した須百(スモモ)さんもいる。
 
「ビワ」
枇杷 ビワ
枇杷木 ビワキ
枇杷田 ビワタ
その他「枇杷」の付く姓多数。
 
果物と関係無いが琵琶さん、批把田さんなどもいる。
 
アケビ
木通 キズシ・キドオシ他
 
恐らく果物のアケビ由来の姓ではない。
読みがアケビのものには明比、明日など
 
「イチジク」
九 イチジク
一軸 イチジク
 
どちらも果物のイチジク由来ではない。
上は「一字で九」からきた頓智の読み。
 
「ユズ」
柚 ユ・ユウ
その他「柚」の付く姓多数。
 
「柚子」が付く姓はいない。
 
「ダイダイ」
橙 ダイダイ・カブス
 
「クルミ」
胡桃 クルミ
胡桃沢 クルミザワ・クルミサワ
胡桃坂 クルミサカ・クルミザカ
楜沢  クルミザワ・クルミサワ
楜桃田 クルミダ
胡桃田 クルミダ
 
胡桃姓は、果物単体の苗字としては多い方である。
 
「カキ」
柿 カキ
渋柿 シブガキ
甘柿 アマカキ
その他「柿」の付く姓多数。
 
「クリ」
栗 クリ
団栗 ドングリ・ダングリ
その他「栗」の付く姓多数。
 
「カリン」
花梨 カリン
 
「グミ」
茱萸 グミ
茱萸田 グミダ
浅井取 アサイドリ
 
無論お菓子のグミとは無関係。
アサイドリは島根県でのグミの方言名。
 
「ナツメ」
棗 ナツメ
棗田 ナツメダ
棘 ナツメ・イバラ
 
「クコ」
枸杞 クコ
 
「バナナ」
芭蕉 バショウ
芭蕉宮 バショウミヤ
 
「マンゴー」
万合 マンゴウ
 
少なくともマンゴーが由来ではないのは確か。
 
「パラミツ」
波羅密 ハラミツ
 
パラミツは英語でジャックフルーツ
パラミツの漢字表記は「波羅蜜」なので厳密には違う(蜜波羅と云う姓ならいるのだが)。
到達、達成などを意味するサンスクリット語पारमि(パーラミー)由来。調べてたら英語の「パラメータ」と「波羅蜜」の語源は同じサンスクリット語と出たのだが本当だろうか。
 
 
 
 
ざっと思いついたフルーツがこんなもんなので、もっとあるかも知れないが今回はここまで。文字にオレンジ色を付けられないはてなブログさんマジカス。
 
 
因みに「水菓子」さんも実在する。
水菓子は本来果物を表す言葉。ゼリーとか水羊羹のことだとか思ってた人は悔い改めて、どうぞ
 

緑寿庵清水

に、行ってきた。

 

 

 

今から約500年前、ポルトガルから伝わった南蛮菓子として御馴染みの金平糖

素朴なお菓子としての印象が強い金平糖だが、陸上自衛隊のレーションとして利用されたり、皇室の引き出物に使われていたりと却々馬鹿に出来ないお菓子である。

 

緑寿庵清水は正に皇室御用達の、日本で唯一の金平糖専門店である。 

金平糖」でググると何よりも先にこの緑寿庵清水のホームページがヒットする処から、この店の偉大さが窺い知れる。

 

何で急に金平糖やねんと思われるかもしれないので経緯を説明すると、半年前に出てた芝居の共演者の女の子が休憩中にバナナ味の金平糖食べてて、ちょっと貰ったら大変美味しかったのでどこで買ったのか訊いたら「京大の近く」としか教えてくれなくて半年間もやもやしてて、先日後輩がこの緑寿庵清水のことをツイートしてたので調べてみたらあのバナナ味の金平糖を販売している店だと分かり、本日バイトの休憩時間に訪れてみたと云う塩梅である。

 

 
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厳かな外観。「金平糖」の字がなければ御茶屋さんにしか見えない。
 
 
残念ながら店内は撮影禁止だったので文字のみのレポート。
 
平日の昼間だがそこそこ賑わっている。そして割と店内が狭い。
 
狭い店内に様々な味の金平糖(約60種)が売られていて目移りする。
 
LUSHばりに店員さんが話しかけてくる。店員さんがめっちゃ可愛かったので大人しく話を聞く私。
 
 
緑寿庵清水の金平糖は全て手作りで、普通の砂糖の金平糖でも約2週間、その他の素材を使ったものなら約3週間かけて職人さんが作り上げるとのこと。
 
店内の両端の棚には『究極の金平糖』と銘打たれた、完全予約制の限定金平糖のサンプルが並んでいる。究極のチョコレートの金平糖、究極の梅酒の金平糖、究極の赤ワインの金平糖エトセトラエトセトラ。これらは金平糖にすることが難しいと言われる素材を何とか頑張って金平糖にしたものだそうで、職人さんの底意地が窺える。これら究極の金平糖群は軒並み4000円近い価格で、赤ワインの金平糖に至っては税抜き価格8500円と云う代物だが、既に来年発売予定の分まで予約が埋まっておりキャンセル待ちだと云う。
 
 
その棚の上には仰々しい瓶に入った金平糖群。店員さん曰く30~70年前に作られた金平糖たちで、今でも当時の風味を一切損なうことなく食べることができるとのこと。はぇ~ちゃんと作ればそんなに保存が効くもんなんですなぁ。自衛隊のレーションになるのも納得。
 
 
棚を眺めてると店員さんが「こちら今の季節の金平糖ですのでどうぞ召し上がってください」と、金平糖を試食させてくれた。至れり尽くせりやなこの店。
 
『柚子の角平糖』『丹波黒豆紫蘇金平糖』『焼栗の金平糖』の三種を試食させてもらう。「お口の中で噛んでお召し上がりください」と言われて、あぁ舐めるのは間違った食べ方なんだと地味に新たな発見。三種それぞれ素材の風味が生かされ、馥郁たる香味が口中に広がる。中でも焼栗の金平糖は絶品だった。口に入れて齧ると、栗の香ばしさに思わず「あっこれすげぇ!!」と言ってしまう程の逸物(店員さんに笑われた)。あんな小さな粒にここまで焼栗の要素を詰め込めるもんなのかと驚嘆。
 
 
いろいろ感動したので、お目当ての『ばななの金平糖』含め5種の小袋を購入。
 
 
 
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クッソかわいい(迫真)。
テンション上がって金平糖ケースまで買っちまった。
 
奥から
『苺の金平糖
『ばななの金平糖
『めろんの金平糖
『天然水サイダーの金平糖
『巨峰の金平糖
の小袋たち。
 
 
小袋は御一人様五袋までと言われ、苺とパインどっちにするかずっと迷ってた。間違い無くちょっと体格の良い23歳フリーターが食べていい代物ではない。
 
てかこれ見て気づいたんだけど、一回芝居の差し入れでここの金平糖もらったことあるわ。その時は普通の砂糖の金平糖だったけど。
 
一刻も早く賞味したいが生憎ニンニクを大量摂取してしまい本来の風味を楽しめない気がするので、明後日あたりに食べようと思う。
 
 
 
 
いやーちょっと、今まで金平糖をナメてたなー(掛詞)

物語に於ける創作漢字

名作『もののけ姫』に用いられている楽曲の一つに『アシタカせっ記』と云うものがある。

 

 

「せっ」の部分は上のような字を書くのだが(アンサイクロペディアから拝借)、これは宮崎駿の造字であり、また「せっ記」と云う言葉も宮崎駿の造語である。単語は「草に埋もれながら人の耳から耳へと語り継がれていく物語」と云う意味で、漢字はこの意味から創られた会意文字であると言える。

因みに宮崎駿は映画のタイトルを『アシタカせっ記』にしようとしたが、プロデューサーが『もののけ姫』で押し通したという。アシタカせっ記のままだったら色々めんどくさいことになってただろうなぁ(unicodeに漢字が存在しない的な意味で)。

 

小学校高学年の頃にジブリのピアノ楽譜を友人の家でボーッと見ていたらこの字に出くわして、家に帰って漢字字典を開いたものの字が見つからずに結局もやもやしたままだったのだが、最近詳細を知って漸くすっきりした。そりゃ字典に載ってないわけだ。

 

 

物語の為に創作された漢字と言うと、魯迅の『故郷』に出てくる猹(チャー)が思い出される。

物語に因ると猹はアナグマに似た、西瓜を食べに来る生き物であるとのこと。

実際は架空の生物で、「猹」の字も魯迅が地元の人の発音から造った字である。恐らくアナグマの方言名だったのではないかと邪推。

 

私が中学生の頃教科書で読んだ時この字は「獣偏に査」であったことをはっきり覚えているが、何故かその字はパソコンでは出てこない。声符としても旁は「査」であるべきだと思うのだけれど。

 

 

創作漢字ではないが、夏目漱石は当て字を好んで用いたことが知られている。

浪漫(ロマン)などの当て字は夏目漱石が考案者であると言われている。

 

 

このように、物語を紡いでいく上で新たな漢字文化が形成されていくことは大変興味深い。造語を用いた物語と云うのは然程珍しくないが、新たに漢字を創ってまで語られる話には却々巡り合うことができない。

 

 

閑話休題、創作漢字は一昔前から趣味の一つとして、多くの暇を持て余した中高年の方に親しまれている。創作漢字コンテストも凡ゆる媒体で開催されているのを見掛ける。こうした娯楽としての創作漢字の歴史は古く、かの式亭三馬も『小野●譃字盡(おののばかむらうそじづくし)』(●は竹冠に愚)と云う創作漢字の書物を出している。

 

然しこういった謂わば「お遊び」で作られた漢字と、先に挙げた物語に用いる為に創られた漢字とでは字に込められた重みが断然違ってくる。特に初めに挙げた「せっ記」に至っては、最早「せっ記」と云う言葉だけで『もののけ姫』と云う作品全てを背負っていると言っても過言では無い。

 

苗字にも創作された漢字を使ったものが数こそ少ないが存在する。

一文字に多分に思いを込めた漢字が新たに創られるのなら、その字は一つの文化として後世にも遺されていくべきだと思う。

 

 

 

 

アンサイクロペディア久石譲の項目見たら「ハゲ」しか書いてなくて草生えた

五ヶ月

新しく出来るようになった技

 
・バークスバラージ
・441
・エクスチェンジ
・キャリー
・シンクロファウンテン
・4ボールハーフシャワー
 
 
逆シャワー10キャッチをなんとか達成したので、ジャグリング検定3級に到達(逆シャワーは5級の選択技)。

キャリーをとうとう5周期出来るようになった。やってる最中の必死感は拭いきれないが。
 
シンクロファウンテンは20周期、4ボールハーフシャワーは17周期まで到達。
 
 
遂に5ボールカスケードの練習を始めた。
7キャッチくらいは安定してきたので徐々に回数を伸ばしていきたい。
 
5ボールに慣れるために4ボールの技に慣れておきたい。

552、53に鋭意挑戦中だが、実際まだファウンテンから他の技に移行するのも困難なのでファウンテンを練習しまくろうと思う。4ボールシャワーは4キャッチくらいで毎度詰む。

 
部屋が狭いからボディスロー系の習得はどんどん後回しになっている…

変な駅名2014

私は小学二年生の頃に漢字に興味を持ち、三年程寄り道してから苗字を調べるに至った。その寄り道したものの中に「駅名」がある。難読地名を調べる過程で駅名に興味を持ったのだが、地名や苗字に比べ駅名はかなり流動的なものであり、ここ10年の間にも駅名は増えたり消えたり改名されたりしている。そして地名や苗字よろしく駅名にも、(漢字云々とは関係無しに)奇妙なものが多く存在する。

今回はそんな駅名の中から私が独自にチョイスした、後世に遺されるべき変な駅名を紹介してみる。読み仮名は駅名標に準拠。因みに「及位」「南蛇井」等のあまりにも有名な珍駅名は省いてます。

 

 

佐野のわたし(さののわたし/群馬県上信電鉄上信線)

まずはこちら。いやいや駅名で自己紹介されても。

勿論この「わたし」は「私」ではなく「渡し」のことで、この駅は今年の12月に開業予定だそうな。

 

 

宗太郎(そうたろう/大分県JR九州日豊本線)

これも「いや誰やねん」となってしまう駅名。
この地区を管理していた洲本宗太郎と云う人物の名前が由来。
あまりにも辺鄙な所にあるので一日の平均利用者数が0.22人と云う驚異的な数値を記録している。
 
 
だから誰だよ。
地名由来だが、地名の由来も「仙人が住んでいたから」と云う何の捻りもないもの。
 
 
やっと知ってる人が出てきた。
駅の付近が宮本武蔵の生誕地だからとのこと。いやいや普通に地名を駅名にしたらいいのに。
 
 
歓遊舎ひこさん(かんゆうしゃひこさん/福岡県・JR九州日田彦山線)
歓遊舎ひこさんは人ではなく、道の駅の名前。
英彦山(ひこさん)と云う山の名前が由来だが、これも地味に難読。
 
 
今川河童(いまがわかっぱ/福岡県・平成筑豊鉄道田川線)
近辺に河童の伝説があるから。駅には河童の銅像がある。
 
 

田んぼアート(たんぼあーと/青森県弘南鉄道弘南線)

昨年開業したそのまんまの駅名。田んぼアートが見られない12月から3月までは列車が停まらないという。

 

 

ラベンダー畑(らべんだーばたけ/北海道・JR北海道富良野線)

こちらも捻りのない駅名。こちらは6月から10月までしか列車が停まらないという。
 
 
クッソかわいい駅名。地名由来だが、地名の読みはしろさぎ。
 
 

湖遊館新駅(こゆうかんしんえき/島根県一畑電車北松江線)

駅名が「駅」で終わる日本で唯一の駅。

Wikipediaにはきちんと「湖遊館新駅駅」の項目名で載っている。

 

 

海の王迎(うみのおうむかえ/高知県・くろしお鉄道中村線)

奇跡の一本松(きせきのいっぽんまつ/岩手県JR東日本大船渡線)

源じいの森(げんじいのもり/福岡県・平成筑豊鉄道田川線)

子守唄の里高屋(こもりうたのさとたかや/岡山県井原鉄道井原線)

四季の郷(しきのさと/山形県山形鉄道フラワー長井線)
(にじ/兵庫県摩耶ケーブル線)
星の駅(ほしのえき/兵庫県摩耶ロープウェー)
その他なんとなくかっこかわいいメルヘンな駅名群。
海の王迎駅は、後醍醐天皇の皇子が流刑によって辿り着いた地だかららしい。
 
 
工業団地(こうぎょうだんち/高知県土佐くろしお鉄道宿毛線)
体験坑道(たいけんこうどう/青森県青函トンネル竜飛斜坑線)
試験場前(しけんじょうまえ/福岡県・西日本鉄道天神大牟田線)
産業道路(さんぎょうどうろ/神奈川県・京浜急行電鉄大師線)
 こちらは殺風景な名称の駅たち。因みに試験場前駅の由来となった試験場はもう存在しない。
 
 
後三年(ごさんねん/秋田県JR東日本奥羽本線)
辺り一帯が後三年の役の古戦場だったから。
 
  
中井侍(なかいさむらい/長野県・JR東海飯田線)
付近の集落の名前が由来。
地元の人でも地名の由来がわからないという。
 
 
坂城テクノセンターと云う会社のそばにあるためこの駅名。
 
 
ささしまライブ(愛知県・名古屋臨海高速鉄道あおなみ線)
駅名の英語表記は"Sasashima-raibu"となっておりクソダサい。
 
 
総合リハビリセンター(そうごうリハビリセンター/愛知県・名古屋市営地下鉄名城線)
ささしまライブ駅よろしく英語表記は”Sogo Rihabiri Center”となっている。
 
 
南阿蘇水の生まれる里白水高原(みなみあそみずのうまれるさとはくすいこうげん/熊本県南阿蘇鉄道高森線)
割と有名な日本一長い駅名の二つ。南阿蘇水の生まれる里白水高原駅の隣は阿蘇下田城ふれあい温泉駅で、こちらは日本で五番目に長い。
 
 
昆布盛(こんぶもり/北海道・JR北海道根室本線)
アイヌ語の「コンプ・モイ」(昆布の取れる湾)が由来。アイヌ語でも昆布は昆布。
 
 
五百羅漢(ごひゃくらかん/神奈川県・伊豆箱根鉄道大雄山線)
五百羅漢を安置してある玉宝寺付近にあるため。
 
 
美術館図書館前(びじゅつかんとしょかんまえ/福島県福島交通飯坂線)
元々違う駅名だったのに県立美術館と県立図書館が出来たのでこの欲張った駅名に。 
 
 
東あずま(ひがしあずま/東京都・東武鉄道亀戸線)
いやいや「ひがし」と「あずま」って。
一帯の地名が吾嬬(あづま)だったことに由来する。だったら「東あづま」だろ。
 
 
「へつり」は「」と書き、川に迫った断崖を指す会津地方の方言。
塔のへつりは国の天然記念物に指定されている。
 
 
おもちゃのまち(栃木県・東武鉄道宇都宮線)
有名な珍駅名。そもそも地名がまんま「おもちゃのまち」であることがおかしい。
付近にはおもちゃのまち一丁目~五丁目までが地名として存在する。
 
 
高擶(たかたま/山形県JR東日本奥羽本線)
難漢字難読駅名の中でもトップクラスの難読。地名の高擶(たかだま)に由来。
「擶」の字は日本に於いて用例が殆ど無く、地名でも高擶と同県内にある擶山(たもやま)ぐらいでしか見られない。因みに「擶」の字に「たま」とか「たも」とかの読みはない。
難漢字駅名として有名なものに驫木(とどろき)がある。
 
 
スクリーン(滋賀県近江鉄道多賀線)
スポーツセンター(千葉県・千葉都市モノレール2号線)
フルーツパーク(静岡県・天竜浜名湖鉄道天竜浜名湖線)
ベイサイドアリーナ(宮城県JR東日本気仙沼線)
ベイサイド・ステーション(千葉県・ディズニーリゾートライン)
リゾートゲートウェイ・ステーション(千葉県・ディズニーリゾートライン)
日本では珍しい全てカタカナの駅名一覧。
この中で最初にできたのはニセコ駅
ハーモニーホール駅は「♭」を横にしたような駅舎の形をしていてかわいい。
 
 
心臓血管センター(しんぞうけっかんセンター/群馬県上毛電気鉄道上毛線)
ぎょっとする駅名。因みに以前の駅名は「循環器病センター」だったらしい。
 
 
ノーフォーク広場(のーふぉーくひろば/福岡県・北九州銀行レトロライン)
北九州市とアメリカ・バージニア州のノーフォーク姉妹都市提携を結んでいるためこの名前の広場が存在する。
ノーフォーク」と聞くとこの画像しか思い浮かばない。
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如何だっただろうか。駅名の奥深さに気付いて頂けただろうか。
 
割愛したものも多数あり、面白い駅名を全て紹介できなかったのが残念である(書いてて飽きた)。
 
 
 
 余談だが千葉県にあるユーカリが丘線の駅名、
 
ユーカリが丘⇒地区センター⇒公園⇒井野⇒女子大⇒中学校
 
って凄く投げ遣りな感じがする。
 
 
 
 
 
 
この記事書くのに一か月半かかりました(半ギレ)

街で見掛ける変な漢字5

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阪急電鉄の駅構内にて。
雨冠が「両」の字に置換されている。
レタリングのデザイン上の問題なのかな。

看板やロゴなどで雨冠を崩している字形はよく目にするが、「両」の字になっているのは「電」の字だけな気がする。松下電工のロゴにもこの字が用いられていた。

無論、GlyphWikiには余裕で収録してある。


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下鴨神社の南側にある河合神社にて。
気になったのは「高靇神」の「靇」の字。普通は「龗」の字を書くので誤植かなーと思ったけど単に異体字だった。

龗は33画と云うこともあり、漢字に少々興味を持った人若しくは厨二病患者なら知っている人が多いと思う。龗は訓読みでオカミと読み、罔象女神(ミヅハノメノカミ)と並ぶ水の神様のことである。上記の高龗神(タカオカミノカミ)は山頂にいる龗を指し、谷間にいる龗は闇龗神(クラオカミノカミ)と呼ぶ。iPhoneなら両方とも変換してくれるから大したもんだぜ。

そういやiPhoneで「しずか」を変換すると
「惺靇」←こんなんが出てくる。なにこれ


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看板ではなく手書き
「様」の略字と思われる。
「称」の禾偏が木偏になった形。
「様 略字」で画像検索するとちょくちょく引っかかるが、意外や意外GlyphWikiではヒットしなかった。iPhone手書き入力でも出てこなかったので完全なる日本式の略字と思われる。

手紙を書く時、カッコつけて宛名に略字を使うと無礼に値するので注意(煽りとしては良いかもしれない)。


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「象」の字に注目。口の中の縦棒が多い。

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GlyphWikiには像の字で出てきた。
詳細は全く分からず。誰か教えて。


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よく見ると「穀」の禾が釆になっている。

最初見た時は「穀」の誤字だろと思ったが、調べてみたら異体字らしい。てかiPhone手書き入力使ってて思ったんだけど、「殻」「穀」みたいな漢字いっぱいあるのね(㝅嗀㲄㺉㷤㜌轂縠豰㲉瞉䐨榖觳……)

因みに殻の旧字体は「殼」で、この部分を用いる際はわ冠の下に横線が入るのが普通。漢検一級の新出漢字にも「轂」「愨」などがある。

いやーしかしこの字は知らんかった