THE LAUGHING WOLF

便所のお供に、是非。

排泄のすゝめ

我々は凡ゆる欲に塗れて生きている。


食欲、性欲、睡眠欲、排泄欲などなど、こうした欲は人間が生活していく上で必要不可欠な物であるが故、我々は往々にしてその欲求に身を委ねなければならない。人間に齎された理性と云う概念もこれらの欲の前には意味を為さなくなる。そして欲に身を委せた時、我々は「人間」から「動物」へと豹変する。
 
食事をする時、セックスをする時、睡眠をとる時、排泄をしている時、我々は意図せず野性を剥き出しにする。そして、その野性を隠す為に「マナー」と云うものが存在する。本能に従う醜い人間を少しでも綺麗に取り繕う為に、各々の行為に対する作法が誕生したのである。
 
 
然し、ここで私は不可思議に思う。
「食事」「セックス」「睡眠」には、程度の差はあれどマナーや美学が存在するのに対し、「排泄」のマナーや美学と云うのは殆ど聞いた事が無い。中国では大凡子供が街中で排泄を行うのが一般的なようで、北京五輪開幕時にその「排泄マナー」の是非が問われたが、日本で暮らしていればそのようなマナーに触れる機会はまず無いだろう。
 
他の欲求に対して排泄、殊に大便の排泄に関しては他人に見られる機会が(余程特殊な場合を除いて)存在しない為、行儀作法と云う概念が無いのも頷ける。然し両親、先生、恋人、アイドル、誰もが排泄行為を日常的に行っている訳で、排泄欲だけが「出すもの出して終わり」と蔑ろにされる形で満たされている現状は果たして看過されて良いのだろうか。
 
 
排泄の仕方ひとつで我々の生活はより彩りのあるものになると思う。斯く言う私はうんこのスペシャリストを自負しており、快適な排便ライフを送ることを常に考えてきた。野糞している最中に観光バスの乗客と目が合う、高速バスに乗っている際に催して本来停まる予定の無いサービスエリアに寄ってもらう(人生で二度経験)、電車通学の際腹痛で三回途中下車して遅刻、母親の胎内にいる時にうんこを漏らす等々、私のうんこエピソードは枚挙に遑がない。たかがうんこ、されどうんこ。うんこを馬鹿にしても、うんこ無しに我々は生きられない。NO UNKO,NO LIFE.
 
どうせ排泄するなら、有意義な排泄をしようではないか。と言う訳で私が生涯を懸けて学んできた排泄のノウハウを、今ここに纏めてみる。これを読んだ皆様の今後の排便ライフが実りあるものになれば幸いである。
 
 
 
・温水洗浄便座>和式>洋式
 
これは便座選びの際の優先度。粘性の高いうんこを放り出す私は肛門を拭く作業に手間取る為、洗浄機付きの便座を最も敬愛している。次点の和式は排便の際の踏ん張りを重視。和式が苦手な人は多いと聞くが、そのような人たちは今一度日本人の何たるかを再確認し、自己を啓発してその意識を改めて欲しい。因ってただの洋式便器は無価値に等しいので極力使わない。
 
 
・ズボンとパンツは完全に脱ぐ
 
衣服を脱ぎ切らず、踝辺りまで下ろした状態でそのまま用を足す人は多いのではないだろうか。洋式の際は構わないが、和式でのこの行為は大変な危険を伴う。取り分け男性の場合、排便時に排尿を伴った際尿がそのままずり下ろしたパンツの中にシュートする可能性がある(経験談)。このトラウマから私はズボンとパンツを脱ぎ切ることを信条にしている。また洋式便器でも、下半身を自由な状態にしておけば股を極限まで開くことができ、より一層気張ることができる。
 
 
・便器に紙を敷く
 
これは一般的にも知られる、数少ない便所でのマナー。便器に便がこびり付くのを防ぐ為に行う。私のような粘土状のうんこを出す者にとっては欠かせない行為である。
 
 
・手で肛門を開く
 
これは和式で使えるテクニックである。勿論直接指で肛門を抉じ開ける訳ではなく、左右の尻臀を両手で掴み、肛門を開くことをイメージして外側に引っ張る。こうすることで排便のキレが格段に良くなる。肛門を俗に菊の花と形容することから、このテクニックは「菊の夜明け」と呼ばれる。
 
 
・音楽を聴く
 
気分が昂揚する音楽やロックテイストの音楽が望ましい。ベースやドラムの主張が強いと尚良い。個人差はあるが、気張りの具合が違ってくる。高校時代の私はiPodにトイレ用のプレイリストを作成するほどであった。
 
 
・煙草を吸う
 
ニコチンに腸を動かすはたらきがあるため、便秘に悩む女性が煙草に手を出すケースもあるという。私は自宅でのトイレでは専ら煙草を吸いながら排便をしているが、皆さんは決して喫煙が許される場所以外ではやらないで頂きたい。
 
 
・鼻を擤む、嚔をする
 
便を出し切ったつもりでも、擤鼻すると残党が現れることがある。嚔も同様である。
 
 
・水道管を握る
 
比較的ポピュラーな、和式で使えるテクニック。姿勢が安定し、物を握ることで踏ん張りの力が増す。あまり細い管だと意味が無い。「パイプをつかまないでください」と注意書きがある場合は必ずそれに従う。手摺があればそちらを優先して頂きたい。
 
 
・紙を濡らす
 
肛門を拭く際に用いる、愛好者の多いテクニック。より確実に便を拭き取ることができる。問題はどこで紙を濡らすか、ということだが、洗浄口から直接出てくる水は綺麗なので上手くそこに紙を宛がって部分的に濡らすのが理想である。そばに手洗い場があればそちら優先で。ウエットティッシュを持ち歩く人や唾で紙を濡らす人などもいるらしいので参考までに。
 
 
 
如何だっただろうか。排泄の奥深さを噛み締めて頂けただろうか。
ここに書いたノウハウを全て同時に行おうものなら、それはもうえらいことになるだろう(肛門が)。
 
ここで私が紹介したのは氷山の一角に過ぎず、世にはより自分の理想の排泄を求め、座り方や服装、紙や流し方にまで拘る人が多く存在する。排泄と云う極めてプライベートな行為は、各々のアイデンティティを成長させることに一役買っている。そしてその誰にも見せない行為には、各々の個性が如実に表れていると言っても過言ではない。
 
皆様もどうか一度己の排泄を見つめ直し、人生を鑑みてはどうだろうか